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茫漠とした石狩川河口域

 久しぶりに元同僚のNさんを訪ねて、一緒に石狩川河口の親船まで訪れることにする。やや肌寒いが素晴らしい青空が広がっていて車を走らせることが楽くなる。石狩市の中心が移ってからこの辺りは随分さびれた様子が漂っているが、住んでいる人には失礼なことだが、こういう雰囲気は静かで落ち着いていて好きだ。もともとはこちらの方が開拓の歴史も古く町としての歴史があるのだろう。
 船場町から石狩川渡船場跡に向かう。

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 ここからは浜益から増毛に至るまだまだ白く雪に覆われた山系がはるばる見渡され、振り返ると背後には手稲山も聳えている。そこから銭函から積丹に向かう海岸線が連なっている。Nさんによると橋ができる前は、ここから親戚を訪ねてよく川を船で渡ったという。冬は氷の上を渡って怖かったとのこと。
 もっと時代をさかのぼれば北海道の開拓時代を描いた本庄陸男の「石狩川」の中には、確か危険を冒して厚田から川を渡って開拓使に向かう場面があったと記憶している。そんな歴史を振り返りながら川を見渡すと、そのコーヒー色のゆったりとした流れは、渡るには対岸までかなりの川幅があるように感じられる。
 川べりでは今時期はあまり釣れないのか、釣り人が一組だけ桟橋の上で釣り糸を垂れている。さらに進むともう一人車を背にのんびり釣り竿を立てて魚信を待っている。

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 カレイを狙っているそうで、バケツには一匹いいサイズのカレイが泳いでいた。けれどウグイばかりでカレイはさっぱりだという。それでもこんないい天気の中、のんびりと腰かけて魚信を待つというのは、いかにも長閑な感じがして自分もその景色の中の一員でいたいものだと思う。
 こんな茶色の濁った川では毛ばりで釣るべくもないし、サケ釣りは川では御法度だといっても、旭川や千歳の鮭もここから上っていくのだと思うと、今頃はサクラマスが群れを成して泳いでいくのではとその姿が想像された。
 せっかく来たのだからと一度車に戻って、ビジターセンターまで移動して河口を目指すことにする。町のはずれに随分由緒ありげな古い寺があるのは、やはりこの地域の歴史が古さを物語っているようだ。行ってみるとビジターセンターはまだ開いていず、駐車場は閑散としていた。そこからは車椅子でも行けそうなくらい立派な隙間のない木道も敷かれていてが、敢えて河岸の砂の混じりの道を行く。

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 辺りは一面どこまでも砂地の中の草木が枯れて、茶色く殺伐としていたが、ハマナスの丘というくらいだから、初夏が近づけばピンク色の美しい花が咲き乱れるのだろうか。
 真っ青な空には強い風にあらがって雲雀たちが羽をしきりに動かしながら囀っている。今のところこの風景の中で春の生命感を感じさせるのは、この雲雀と越冬した風に飛ばされている蝶だけのようだ。

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 途中長尺のカメラを持った人と出会った。ノゴマを初めとして、ここではこれからいろいろな鳥に出会えるのだという。今日はこの雲雀だけだったとのこと。こうやって季節とともに鳥を追い求めて撮影していく、というのもなかなか一途な良い生き方だなぁと思う。
 風に吹かれて雲雀の囀りを聞きながら1キロほど河畔を下ると、ようやく海岸線に打ち寄せる白波が見えてくる。

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 そこに広がる海は石狩川の水のせいかどこまでも茶色に染まっている。さすがに注ぎ込む水量が並々でないと実感させられる。ここも夏には海水浴客で賑わうのだろうか。ただ今は荒涼とした景色がどこまでも広がっているだけだ。これがこんな札幌の街までわずかな距離の浜なんだからなぁ。
 随分歩いたので腹が減って来た。そろそろ街に戻って昼食にしようか。
 
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by kimamani-outdoor | 2017-04-10 17:03 | 散策