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藻岩山 春の花めぐり  その2

 3日 久しぶりに北ノ沢から登ることにする。ここも登山客の少ないルート。途中まで昔の宅地造成の取り付け道路の跡の様な山道を歩く。一気に気温が上がったようで上着を着ると汗ばむほどだ。鳥の鳴き声も軽やかで相変わらず穏やかな春だ。

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アオジ?

 途中降りてきた登山客と出会ったが、帰路にも再び会ったので慈恵会からのルートからちょっとこちらのルートにも立ち寄ってから、山頂に向かうという登山者なのかもしれない。
 一旦急な斜面を下って再びなだらかな斜面を登っていくと谷あいの彼方に人家が見え、そのはるか彼方に白い雪を頂いた山が見えるのは空沼岳かもしれない。その谷あいにいくつか辛夷が咲いていて山里めいた印象深い光景だ。

 
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 もう少し行くと慈恵会からのルートと合流するが、その手前の斜面にエゾエンゴサクと福寿草のちょっとした花畑がある。昨年は少し行くのが遅かったのか、春の訪れが早かったのか、既に花は終わったような様子だったが今年はどうだろうか。
 着いてみると花盛りというほどではないが、花たちはまだつややかな色をして、ここれから一斉に咲こうという趣である。これはこれで良いが、なかなか真っ盛りの時期には出会えないものだ。

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 帰りにまた穏やかな山道を降りる。宅地を造成するつもりであったと思われる石垣も、いつまで埋もれずにいることだろうか。正面に見える山には、ぽつりぽつりと辛夷の咲いている木々が見える。先日通った小林峠からのルートはどの辺であろうか。ふと川の方へ立ち寄るともう白い二輪草の花が咲き始めていた。

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 登山口に戻るとすぐ後に、トレイルランニングと思われる若者が入り口の地図をスマートフォンで撮影している。
慈恵会から登って来たのですかと尋ねると、はいと答えて、すべての登山ルートを登りましたと多少息を切らし気味で答えてくれ、また元の登山道を引き返していった。その時は日を置いて全て登ったと言った思ったのだが、考えてみるとたぶん今日一日で全て登ったということだったのだろうと察すると、なんとも元気なことだと思うとともに、こちらの考える山登りとは随分感覚が違っているなぁと思われた。

 4日 今日は東本願寺北海御廟から平和の塔へ向かうことにする。登山とは言えないようなルートだが、ここはなんとも人間の作った人工物と自然の調和が美しいと感じる。昨日の暖気もあって桜はもちろんのこと、新緑も大いに芽生え始めて色鮮やかだ。
 お墓の間の石段を登っていくと、最近建て替えられた新しい塔の輝く先端が見えきて新緑の木々の間に浮き出ている。
そこでまた堀辰雄で恐縮だが浄瑠璃寺の春の一文を思い出した。浄瑠璃寺の塔の九輪をのことを「ふいと翔け去ったこの世ならぬ美しい色をした鳥の翼のようなもの」と描写している。

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 これから掃除しようとしていると思われる寺の方に、思わずきれいですねと話しかけてしまったほどだ。古い塔が壊されたときは随分ガッカリとしたものだが、こういう再生もいいものだなと思う。
 寺の塔から平和の塔に向かうと、これもまた新緑の合間に見える白い塔が美しい。それに桜のピンク、辛夷の白が加わる。以前辛夷は咲き始めが一番と書いたが、こうしてみると新緑との対比も美しい。これは春が一度に訪れる北海道ならではの光景なのではないだろうか。

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 塔にたどり着くと水場には今年もサンショウウオの卵が産み付けられている。一度無事育っている姿を見に来たいものだ。この塔は幼い頃によく遊びに来た思い出もあるのだが、新しく建て替えられて白が鮮やかだ。これはこれで時の経過ということで良いことなのだろう。
 塔よりも遥かに古そうな不揃いの石段を手すりにつかまりながら下りていく。ちょっと高齢者には登るのは辛そうだな。

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 下りの道もいかにも年月の経過を感じさせるような、多くの参拝者の訪れを感じさせるような、しっかりと歩きこまれた道で、長い時を経ていくつもの春を経過してきたことを感じさせる、エンレイソウやエゾエンゴサクの花が咲いている。
 立派になったロープ―ウェイの入り口まで降りると、旧小熊亭の青い屋根が見える。まだ明かりもなくひっそりとしているのは開店前なのだろう。今日はこれからきっと忙しくなるに違いない。背景の春の目覚め始めた山に、この多少古風な建物がいかにも調和して見えた。

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 5日 今日は久しぶりに慈恵会からのルートをたどることにする。ここは登り口の観音寺の庭や、付近の家の庭がきれいだ。また登山道や周りの木々も多くの年輪を重ねているようで、落ち着いた気持ちにさせられる道だ。ただいかにも人気なのか登山者が多く、しかもゴールデンウィークとあってはとちょっと登るのを臆してしまう。しかし今日はあまりにも良い気候なので押して行ってみることにする。
 登り口から名前の知らない慎ましやかな黄色の花が咲いている。あとで調べてみよう。

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キバナノアマナとのこと

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早咲きのヒトリシズカも

 それにしてもエゾエンゴサクの花がどこのルートにもまして咲いているのは、やはり古くから保護されている森だからなのかと思わされる。
 そしてここのもう一つの主役は何といっても道の脇の古びた観音様たちだ。それぞれに様々な表情と和歌が添えられていて、気持ちが和む。

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 木立を通して、旭丘高校のグラウンドからだろうか、野球の練習試合でも始まるらしい掛け声が聞こえてくる。そういう声も決してうるさい感じがせず、人里の山道という雰囲気を醸し出していていいものだ。
 それにしてもすごい数のエゾエンゴサクだ。その合間をマルハナバチらしい図体の大きな蜂が飛び回っている。その大きな体が花に留まると重さで一気に花がしなだれるのが楽しい。工藤岳さんの本によると、このマルハナバチは大雪の花々の受粉に大いに貢献しているということだ。そう思うとその大きな体が何か頼もしいものに見えてくる。

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 またいかにも時を経たような広葉樹の大木が、あちらこちらにどっかりと腰を据えている。かなり前だが台風で倒れたのを随分惜しんだものだが、今はその折れた幹の跡も古びて、この山々の自然にすっかり溶け込んている。
 界川の谷を右手に見ながら登っていくと次第に札幌の街が見下ろされてくる。この二三日の暖かさで一挙に対岸の山肌には様々な色のパッチワークが浮き出てていて、まるで本当の紅葉の山にも見える。違うことといえば辛夷の白が加わっていることか。

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 その界川を登りつめていくとだんだん傾斜がきつくなってくるが、その斜面は見事なばかりのエゾエンゴサクの花盛りだ。ここは何回も登っているが、これは新しい発見だった。この斜面は北向きなので春が遅いのかもしれない。

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 長くこのルートを登っているらしい女性の方が、今真っ盛りですね、そこは福寿草がすごいんですよと指さして教えてくれた。ふと見上げると大輪の福寿草がいくつも咲いていた。

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 旭山ルートとの分岐にたどり着くと、自分は右に折れて少し旭山方面に行ってみる。ここからは日当たりがいいのかに春の進み具合が早くもう菫が咲いている。

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ヒメイチゲも

 小高いところまで上ると円山公園が見え、球場かららしい声援が風に乗ってかすかにきこえて来る。まさに札幌の街にも球春到来といったところなのだろう。

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 そこから引き返して登山口まで戻るまで、いったい幾組の登山客と挨拶を交わしたことだろう。さすがに疲れて来るなぁと思っていると、家族連れらしいグループが何組も登ってきて、その中の小さな子供が元気に挨拶する。なんとも微笑ましい光景だろう。中にはもう疲れて嫌になったのかうなだれている子供もいるが、それでも子供の日に家族そろって藻岩山に登れる幸せというものはどのようなものかと思う。きっと大人になっても、一緒に過ごした時間は記憶の奥にしっかりと刻まれていることだろう。こんな一日があってもいいと思う。

by kimamani-outdoor | 2017-05-07 12:02 | 山歩き